木材の可能性
必要性の認識
すべてはこのチェアから始まった
チャールズ&レイ・イームズとハーマンミラーの長期にわたる実り多い関係は、1946年にイームズプライウッドチェアから始まりました。イームズ夫妻はこのチェアで、クッションがなくても快適な座り心地で量産が簡単なチェアを初めて試みたのです。
木材の可能性
チャールズとレイは結婚後間もなくの1941年に、素材としての木材の可能性を試す実験を始めました。夫妻がさまざまな木材成型の技法を試す中で多くの発見をすると、アメリカ海軍からプライウッドの添え木、担架、グライダーシェルなどの開発の依頼が舞い込み、それらは第二次世界大戦で活用されました。
チャールズは、デザインにあたっては必要性を認識することが第一条件であると述べています。大戦が終結し戦後の経済成長が始まると、イームズ夫妻は、高品質でありながら手頃な価格であり、急速な変化を遂げるアメリカの平均的な家庭においてさまざまな用途に使える家具が必要とされていることを認識しました。そして海軍のために考案した、熱と圧力を加えて木材を成型する技法を、家具にも応用できることを思いついたのです。
「デザインにあたっては
必要性を認識することが第一条件である」
- チャールズ・イームズ
変化をもたらしたチェア
軽量で、複合的な曲線を描き、無駄のないすっきりとした外観のイームズプライウッドチェアが誕生したことで、家具のデザインと製造は変化を遂げました。イームズ夫妻のチームは、比較的安価な素材と大量生産を活用しながら、人間の身体によくフィットするシートと背もたれを形作り、画期的であることはもちろん、実に快適な座り心地のチェアを生み出しました。このイームズプライウッドチェアは、現代の家庭においても、第二次世界大戦から兵士が復員してきた当時と同様の新鮮な輝きを放っています。
まったく新しいプライウッド製の家具
戦後、アメリカの住宅事情は劇的に変化しました。復員軍人援護法によって、復員兵は大学の学位を取得してよりよい職業に就けることとなり、彼らのほとんどは自分の家と家庭を持ちたいと望みました。こうした動きの結果として生じた現象がベビーブームであり、郊外型住宅の拡大です。そしてこれらの新築住宅には、家具が必要だったのです。
当時、プライウッドは建築用資材であり、家具の素材としては一般的ではありませんでした。しかし、イームズ夫妻はこの素材を好みました。クッションを張る代わりに適切に成型したプライウッドを使うことで、大量生産が可能になると信じていたからです。夫妻とそのチームは、何年もかけてプライウッドの成型を実験した末に、最終的な工程を完成させました。